解説記事

義務なのか認定なのか、それとも共同認定? ― 自社がどこの立場なのか確認する

公開日: 2026年5月7日

日本版DBS(こども性暴力防止法)に対する事業者の関わり方は、「義務」「認定」「共同認定」の3つに整理できます。学習塾・スポーツクラブ・音楽教室など民間教育事業の経営者にとって、まずは自社がどこに位置づけられるかを確認することが出発点です。本稿では基本の2区分を整理したうえで、やや複雑な「共同認定」という第3の論点を解説します。

1. 基本の2区分 ― 義務か認定か

日本版DBSの対象事業者は、法律上まず「義務対象事業者(学校設置者等)」と「認定対象事業者(民間教育保育等事業者)」の2類型に分かれます。

区分対象概要
義務対象学校設置者等法令に基づき認可・指定を受けて運営される事業。法律上、自動的に義務として安全確保措置・犯罪事実確認等を講じる必要がある。
認定対象民間教育保育等事業者学校設置者等以外で、こどもに関わる民間事業者。認定を受けるかどうかは任意。受ければ義務対象と同等の措置を継続的に講じる。

義務対象となる主な事業

  • 学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校など)
  • 認定こども園、認可保育所
  • 児童養護施設、乳児院、母子生活支援施設
  • 児童発達支援、放課後等デイサービス(指定障害児通所支援事業)
  • 児童相談所、児童館

認定対象となる主な事業

  • 学習塾、予備校
  • スポーツクラブ、ダンス教室、音楽教室、英会話スクール
  • 放課後児童クラブ(学童保育)
  • 認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業
  • ベビーシッター事業者

原則:民間教育事業者は「任意の認定」

株式会社や個人事業として運営される一般的な学習塾・スポーツクラブ・音楽教室・習い事教室などは、原則として認定対象事業者に該当します。義務対象ではありません。認定を受けるかどうかは経営判断であり、認定を受けない選択も合法的な経営判断として認められています。

※ 個人事業主の家庭教師、ベビーシッター、個人塾経営者などは、現時点では認定対象に含まれていません。法の付帯決議では、これら個人事業主への制度適用について政府に検討を求める内容が盛り込まれており、将来的な制度見直しの対象とされています。

2. 第3の論点 ― 「共同認定」という枠組み

ここまでの整理で、自社が義務対象でなければ「任意の認定」と判断できそうに見えます。しかし、もう一つ押さえておくべき論点があります。それが**「共同認定」**です。

共同認定とは、学校設置者等(自治体・学校法人など)から委託や指定を受けて事業を運営している民間事業者について、委託元の事業運営者と、実際に運営を担う民間事業者が共同で認定申請を行う仕組みです(本法21条1項)。

共同認定が想定されるケース

  • 自治体から委託を受けて運営する公営塾
  • 学校内で実施される放課後学習支援事業
  • 公立施設との連携で運営する補習講座や学習支援プログラム
  • 地方自治体・学校法人等から指定・委託を受けて運営する民間教育事業

「義務のような扱い」になる側面

共同認定は形式上は「認定」の枠組みですが、委託元との契約関係に基づくため、事実上、義務に近い形で対応を求められることになります。「自社の判断で認定を受けるかどうか決める」という単独認定とは性質が異なり、委託元と協議のうえで共同認定の枠組みに組み込まれていく流れになります。

この場合、自社単独で認定を取るのではなく、委託元と契約関係や責任分担を整理したうえで申請を進める必要があるため、通常の単独認定よりも調整に手間がかかります。

判断のポイント

自社事業の中に「自治体・学校法人・公立施設等から委託・指定を受けているもの」がある場合、その事業については共同認定の枠組みを意識する必要があります。複数の事業を運営している場合、事業ごとに判断が変わることもあります(例:本部事業は単独認定、自治体委託の公営塾事業は共同認定)。

3. 認定を受けるとどうなるか

認定を受ける場合(単独認定・共同認定のいずれも)、義務対象事業者と同等の対応が求められます。主な内容は次のとおりです。

対応領域主な内容
従事者の確認こどもと接する業務に従事させる前の特定性犯罪前科の確認、5年ごとの再確認
就業規則の整備採用条件、誓約書、懲戒規定、配置転換の根拠規定の見直し
相談・通報体制こどもからの相談窓口、保護者からの通報経路、初動対応フローの整備
研修・面談従事者への研修、こどもとの定期面談・アンケートの実施
情報管理確認結果や相談記録の保管・廃棄ルール、アクセス権限の制限

これらは認定取得時に一度整えれば終わりではなく、認定を維持する限り継続的に運用する必要があります。認定を受けるかどうかは、運用負荷も含めた経営判断になります。

4. 認定を受けるか受けないかの判断軸

単独認定ルートに当たる事業者にとって、認定取得は任意です。判断にあたっては、次のような観点を総合的に検討することが重要です。

  • 保護者への安全保証:認定を受けることで、事業者マーク(こまもろう・ブルー)を表示できる。教室・スクール選びの判断材料として保護者の意思決定に影響し得る
  • 従事者採用の質:確認の仕組みを採用フローに組み込むことで、従事者選定の信頼性を高められる
  • 継続運用の負荷:就業規則改定、相談体制、研修、情報管理などの体制整備と継続運用の負荷が発生する
  • 競合の動向:同地域・同業態の競合が認定を取得した場合、認定なし事業者との差別化が顕在化する可能性がある

まとめ

民間教育事業の経営判断としてまず確認すべきは、自社が「義務対象」「認定対象」「共同認定」のどこに位置づけられるかです。一般的な民間教育事業者は任意の認定対象であり、認定を受けるかどうかは経営判断となります。一方、自治体や学校法人等から委託・指定を受けている事業がある場合は、共同認定という別の枠組みが関わってきます。

自社の立場が確認できたら、次は認定対象となる「民間教育事業」の認定要件を具体的に判定するステップに進みます。次回の解説記事では、認定要件4つ(修業期間・対面・場所・人数)について解説します。


関連記事: 日本版DBSとは|制度の全体像と事業者が今から準備すべきこと →


本記事は2026年5月時点の情報に基づき作成しています。制度の詳細・最新動向はこども家庭庁の公式情報もあわせてご参照ください。

運営: 社会保険労務士法人アクセル / 日本版DBS支援センター(nihonbandbs.com)

本記事は一般的な解説を目的としており、個別の対応方針は事業内容・運営実態により異なります。 具体的な対応についてはヒアリングのうえご案内します。

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