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認定取得の前に ― 経営者・管理者が確認すべき"棚卸し"6項目

公開日: 2026年5月14日

#準備実務#認定#チェックリスト

日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定取得を検討している経営者の方から「何から始めればいいか」というご相談が増えています。結論を言うと、申請書類の作成より先に、社内の体制が整備できているかを点検することのほうが大事です。「棚卸し」と言いつつ、実際にはそもそも整備されていない領域が見つかるケースも少なくありません。

なぜ「棚卸し」が先なのか

認定申請に必要な書類は、こども家庭庁から各種ひな型が公表されています。就業規則の参考例、誓約書、対処規程など、書類だけ見ればコピー&調整で済みそうに思えるかもしれません。

しかし実際にひな型を当てはめようとすると、**「自社の現状がそもそも分からないと書類を埋められない」「そもそも該当する規程やルールが整備されていない」**という場面に必ずぶつかります。誰がこどもと接する業務に該当するのか、現行の就業規則とのずれはどこか、相談を受けたら誰がどう動くのか ― これらを把握・整備していなければ、書類は形だけ整っても運用に乗りません。

そこで本稿では、申請書類を作る前に確認すべき6つの観点を提示します。各項目は**「現状の把握」と「整備の点検」を兼ねた**チェックリストとして使えるよう構成しています。整備されていない箇所が見つかったら、そこから着手すべき領域です。

1. 採用フローの棚卸し

まず、講師・スタッフをどのように採用しているかを書き出します。中途採用が中心か、学生アルバイトが中心か、紹介経由か、求人媒体経由か。応募から採用決定までの各ステップで、誰が何を確認しているのかを洗い出します。

確認すべきポイント

  • 応募から内定までのプロセス(誰が・何を・いつ判断しているか)
  • 内定通知書・誓約書の有無と記載内容
  • 身元確認の現状(履歴書のみか、追加で確認しているか)
  • 「こどもと接する業務」に該当する職種の整理

認定取得後は、採用フローに犯罪事実確認のステップが組み込まれます。そもそも内定通知書や誓約書が整備されていない、採用条件が口頭のみで明文化されていないといったケースもあります。既存フローを可視化し、整備されていない箇所から着手することが出発点です。

2. 就業規則・規程類の棚卸し

現行の就業規則をいま一度開いてみます。最終改定日はいつか、採用条件・服務規律・懲戒規定はどうなっているか。日本版DBS対応では、就業規則に手を入れる必要が出てきます。

確認すべきポイント

  • 就業規則の最終改定日(数年放置されていないか)
  • 採用時の提出書類・誓約事項の規定
  • 服務規律の項目(こどもとの接し方に関する規定があるか)
  • 懲戒事由・配置転換の根拠規定

「就業規則は作ったけど数年触っていない」「常時10人未満の事業場で就業規則自体を整備していない」という事業者も少なくありません。就業規則がそもそも未整備のままでは認定対応はできません。日本版DBS対応をきっかけに、労務面の足元を点検する機会と捉えるとよいでしょう。

3. 情報管理の棚卸し

犯罪事実確認の結果は、極めて機微性の高い情報です。誰がアクセスでき、どこに保管され、どう廃棄されるか ― これらを管理するルールが必要になります。

確認すべきポイント

  • 従事者の個人情報の保管場所(紙・電子)
  • アクセス権限の現状(誰が見られる状態か)
  • 退職時の情報処理ルール
  • 個人情報保護方針との整合

情報管理は地味な領域ですが、運用が破綻すると認定の取消しにもつながります。**「ファイルが共有フォルダに置きっぱなし」「アクセス権限が事実上全員にある」**といった状態のままでは認定基準を満たせません。書類のひな型では補えない、自社の運用実態に依存する部分です。

4. 相談・通報体制の棚卸し

こどもや保護者から「気になることがある」と相談を受けたとき、誰がどう動くか。多くの教室・スクールでは明文化されていないか、「現場の管理者に言って」という運用に留まっているのが実情です。

確認すべきポイント

  • こどもからの相談窓口(あるか・知られているか)
  • 保護者からの通報経路
  • 受けた相談の記録・共有のルール
  • 初動対応の責任者と判断基準

認定対象事業者には、相談を受けやすい体制と、初動対応のフローを整備することが求められます。そもそも相談窓口の存在がこどもや保護者に周知されていない、相談記録の共有ルールがない、というケースが多いです。「なんとなくの運用」を、明文化された手順に落とし込む作業が必要になります。

5. 面談・アンケート体制の棚卸し

性暴力等の早期把握のため、こどもとの定期的な面談やアンケートを実施することも求められます。すでに保護者面談・三者面談を実施している事業者は多いと思いますが、その目的や項目に「こどもの安全を確認する」観点が含まれているかは別問題です。

確認すべきポイント

  • 定期面談・三者面談の頻度と実施記録
  • こども本人の声を拾う機会の有無
  • アンケートの実施状況(あれば設問内容)
  • 気になるサインを把握したときの社内共有方法

こども本人に対するアンケートを実施していない事業者、面談記録を残していない事業者も多くあります。実施頻度・記録方法・社内共有のルールを整備しておくことが、認定後の運用を支える基盤になります。

6. 施設の物理的環境の棚卸し

安全確保措置では、ハード面の環境整備も求められます。死角になりやすい場所はないか、こどもと従事者が一対一になる空間がどう管理されているか ― こどもの安全は、規程やルールだけでなく物理的な環境設計によっても支えられます。

確認すべきポイント

  • 個別指導室・更衣室・トイレ周辺などの死角の状況
  • 防犯カメラの設置範囲と稼働状況
  • 窓・扉の透明化、施錠ルールの運用
  • こどもと従事者が一対一になる場面のレイアウト確認

物理的環境は、改修費用や工事の手配が必要になる場合もあるため、認定取得を本格的に検討する段階で早めに着手したい領域です。建物の構造上すぐ変更できない部分は、運用ルール(扉を開けたままにする、複数名体制にする等)で補う方法もあります。

棚卸しの先に見えるもの

この6項目を書き出してみると、多くの事業者で**「制度対応の前に、そもそも整備されていない領域」**が見えてきます。就業規則の未整備、相談窓口の不存在、情報管理ルールの欠落 ― いずれも事業として日常的にこどもに接する以上、本来は日本版DBSの有無に関わらず整えておきたい領域です。

日本版DBSは、ある意味で事業運営の労務・体制を点検する機会でもあります。整備されていない箇所が明らかになったら、認定取得を最終ゴールとせず、まずは事業としての足場を固めることから始めましょう。

申請書類の作成は、整備が終わった後の作業です。逆に言えば、必要な体制が整っていれば、申請書類の作成は専門家と進めることでスムーズに完了します。まずは自社の現状を見える化し、整備されていない領域から着手することが第一歩です。


関連記事: 日本版DBS対応ガイド ― 解説記事一覧 →


本記事は2026年5月時点の情報に基づき作成しています。制度の詳細・最新動向はこども家庭庁の公式情報もあわせてご参照ください。

運営: 社会保険労務士法人アクセル / 日本版DBS支援センター(nihonbandbs.com)

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